○北海道国立大学機構における情報公開に関する開示・不開示の審査基準
(令和4年4月1日機構基準第2号)
北海道国立大学機構(以下「機構」という。)における独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号。以下「法」という。)第9条に規定する開示する旨又は開示をしない旨の決定(以下「開示決定等」という。)についての審査を適正に行うため、北海道国立大学機構における情報公開に関する取扱規程(令和4年度機構規程32号)第10条の規定に基づき、この基準を定めるものとする。
第1 開示決定等の審査基準
法第9条の規定に基づく開示決定等は、以下により行う。
1 法第9条第1項に基づく開示する旨の決定は、次のいずれかに該当する場合に行う。
(1) 開示請求に係る法人文書に法第5条各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)が記録されていない場合
(2) 開示請求に係る法人文書の一部に不開示情報が含まれている場合であって、当該不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるとき。ただし、この場合には、不開示情報が記録されている部分を除いて開示する。
(3) 開示請求に係る法人文書に不開示情報が記録されている場合であっても、法第7条に基づき公益上特に必要があると認めるとき。
2 法第9条第2項に基づく開示をしない旨の決定は、次のいずれかに該当する場合に行う。
(1) 開示請求に係る法人文書に記録されている情報すべてが不開示情報に該当する場合(開示請求に係る法人文書の一部に不開示情報が記録されている場合であって、当該不開示情報が記録されている部分を他の部分と容易に区分して除くことができない場合を含む。)。この場合において、法人文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、法第8条の規定により、開示請求に係る法人文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。
(2) 開示請求に係る法人文書を機構において保有していない場合又は開示請求の対象が法第2条第2項に規定する法人文書に該当しない場合
(3) 法以外の法律における適用除外規定により、開示請求の対象外のもの(登記簿及びその附属書類、特許原簿、訴訟に関する書類等)である場合
(4) 法第4条第1項各号に規定する開示請求書に記載する事項に不備がある場合又は開示請求手数料が納付されていない場合。ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする。
(5) 開示請求が権利濫用に当たる場合。この場合において、権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求に応じた場合の機構の業務への支障及び国民一般の被る不利益等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う。機構の事務を混乱又は停滞させることを目的とするなど開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。
3 前2項の判断に当たっては、法人文書に該当するかどうかの判断は「第2 法人文書該当性に関する基準」に、開示請求に係る法人文書に記録されている情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は「第3 不開示情報該当性に関する基準」に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は「第4 部分開示に関する基準」に、公益上の理由による裁量的開示ができる場合に該当するかどうかの判断は「第5 裁量的開示に関する基準」に、法人文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は「第6 法人文書の存否に関する情報に関する基準」に、それぞれよる。
第2 法人文書該当性に関する基準
開示請求の対象が法第2条第2項に規定する「法人文書」に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
(1) 法第2条第2項に規定する「組織的に用いるもの」に該当するか否かについては、以下の観点から総合的に判断を行うものとする。
イ 法人文書の作成又は取得の状況
(イ) 機構の役員及び職員(以下「役職員」という。)個人の便宜のためにのみ作成又は取得したものか。
(ロ) 直接的又は間接的に管理監督者の指示等の関与があったか。
ロ 法人文書の利用の状況
(イ) 業務上必要なものとして他の役職員又は部外に配付されたものであるかどうか。
(ロ) 他の役職員がその職務上利用しているものであるかどうか。
ハ 保存又は廃棄の状況
(イ) 専ら当該役職員の判断で処理できる性質の文書であるかどうか。
(ロ) 組織として管理している役職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか。
ニ 以下のものは「組織的に用いるもの」に該当しない。
(イ) 役職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のために利用し、組織としての利用を予定していないもの。例えば、1)自己研鑽のための資料、2)備忘録など
(ロ) 役職員が自己の職務の遂行のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し。
(ハ) 役職員の個人的な検討段階に留まるもの。例えば、決裁文書の起案前の役職員の検討段階の文書など。ただし、起案前の文書であっても、組織において、業務上必要なものとして保存されているものは除く。
ホ どの段階から組織として共用文書たる実質を備えた状態になるかについては、文書の利用又は保存の実態により判断されることとなるが、以下の時点を目安とする。
(イ) 決裁を要するものについては、起案文書が作成され、稟議に付された時点
(ロ) 会議資料については、会議に提出した時点
(ハ) 申請書等については、申請書等が機構に到達した時点
(ニ) 組織として管理している役職員共用の保存場所に保存した時点
(2) 法第2条第2項に規定する「保有しているもの」とは、所持している文書をいう。この「所持」は、物を事実上支配している状態をいい、当該文書を書庫等で保管し、又は倉庫業者等をして保管させている場合にも、当該文書を事実上支配していれば「所持」に当たる。一時的に文書を借用している場合や預かっている場合など、当該文書を支配していると認められない場合は、該当しない。
第3 不開示情報該当性に関する基準
開示請求に係る法人文書に不開示情報が記録されているかどうかの判断は、以下の基準により行う。なお、当該判断は、開示決定等を行う時点における状況に基づき行う。
1 法第5条第1号に規定する「個人に関する情報」について
(1) 「個人に関する情報」とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事案、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報及び組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別性のある情報を一般的に不開示とし、個人情報の判断に当たり、原則として公務員等(法第5条第1号ハに規定する「公務員等」をいう。以下同じ。)に関する情報とそれ以外の者に関する情報とを区別していない(ただし、前者については、特に不開示とすべきでない情報を同号ハにおいて除外している。)。「個人」には、生前に不開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適当であることから、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。
(2) 「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報の全体である。「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)、電子メールアドレス等が挙げられる。氏名以外の記述等単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することができることとなる場合もある。
(3) 「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」とは、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別することができるもののことであり、個人識別情報として不開示情報となる。「他の情報」としては、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれ、特別の調査をすれば入手し得るかも知れないような情報については、通例は「他の情報」に含まれない。「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて個別に判断する。また、識別可能性の判断に当たっては、厳密には特定の個々人を識別することができる情報ではないが、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合があり得る。このように、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得る。
(4) 「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、例えば、匿名の作文や無記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるもののことであり、特定の個人を識別できない個人情報であっても、公にすることによりなお個人の権利利益を侵害するおそれがあり、不開示となる。
2 法第5条第1号イに規定する「法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」について
(1) 「法令の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。したがって、公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は「公にされている情報」には該当しない。
(2) 「慣行として」とは、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。ただし、当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
(3) 「公にされ」とは、当該情報が、現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に公知の事実である必要はない。ただし、過去に公にされた情報について、時の経過により、開示決定の時点では「公にされている」とは見られない場合があり得る。
(4) 「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものを含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がない場合等、当該情報の性質上通例公にされるものも含む。
3 法第5条第1号ロに規定する「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」について
不開示にすることにより保護される当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は開示する。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。
4 法第5条第1号ハに規定する「公務員等に関する情報」について
(1) 法人文書には、職務遂行の主体である役職員並びに公務員等(以下「役職員等」という。)の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、機構の諸活動を説明する責務が全うされるようにするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で役職員等についても、個人としての権利利益は十分に保護する必要がある。この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ、特定の役職員等が識別される結果になるとしても、個人に関する情報としては不開示としないこととする。
(2) 「当該個人が公務員等である場合において」とは、当該個人が「役職員等」であっても、職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等役職員等以外の個人に関する情報でもある場合など、一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに不開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該役職員等にとっての不開示情報該当性と他の個人にとっての不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいずれかに該当すれば、当該部分は不開示となる。
(3) 「公務員等」とは、常勤か非常勤かを問わず、国、独立行政法人等及び地方公共団体の職員等(独立行政法人等の役員を含む。以下同じ。)のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、役職員等であった者が当然に含まれるものではないが、役職員等であった当時の情報については、不開示とはならない。
(4) 「職務の遂行に係る情報」とは、役職員等がその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報などがこれに含まれる。また、当該情報は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とし、役職員等の情報であっても、人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は、管理される役職員等の個人情報として保護され、職務遂行に係る情報には該当しない。
(5) 「当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」とは、機構の諸活動を説明する責務が全うされるようにする観点から、役職員等の氏名(補助的業務に従事する非常勤職員の氏名を除く。)については特段の支障の生ずるおそれがある場合を除き、その職名及び職務遂行の内容と共に不開示としないものとする。「特段の支障の生ずるおそれがある場合」とは、氏名を公にすることにより、法第5条第2号から第4号までに掲げる不開示情報を公にすることとなる場合又は個人の権利利益を害することとなる場合とする。
5 本人からの開示請求について
法の定める開示請求権制度は、何人に対しても、請求の目的の如何を問わず請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、特定の個人が識別される情報であれば、法第5条第1号のイからハ又は法第7条の規定に該当しない限り不開示となる。
6 法第5条第2号に規定する「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報」について
(1) 「法人その他の団体」(以下「法人等」という。)とは、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人は、法第5条第2号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、同条第4号の規定に基づき判断する。
(2) 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と関連性を有する情報を意味する。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、法第5条第1号の不開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。
(3) 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」については、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断する。
(4) 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」とは、当該情報を不開示にすることによって、保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益と、これを開示することにより保護される人の生命、健康等の利益とを比較衡量し、後者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は法第5条第2号の不開示情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。
7 法第5条第2号イに規定する「当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」について
(1) 「権利」には、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を含む。
(2) 「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。
(3) 「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含む。
(4) 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類及び性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の権利の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と機構の業務との関係等を十分考慮して適切に判断するものとする。なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。
8 法第5条第2号ロに規定する「公にしないとの条件で任意に提供されたもの」について
(1) 法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報として保護し、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護するものとする。
(2) 「独立行政法人等の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」には、機構の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供された情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、機構が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合も含まれる。
(3) 「公にしない」とは、開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三者に対して当該情報を提供しないとの意味であり、特定の利用目的以外の目的には利用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。
(4) 「条件」については、機構の側から公にしないとの条件で情報の提供を申し入れた場合も、法人等又は事業を営む個人の側から機構の要請があったので情報は提供するが、公にしないでほしいと申し出た場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法については、黙示的なものを排除するものではない。
(5) 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等又は個人において公にしていないことだけでは足りない。
(6) 公にしないとの条件を付すことの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公になっていたり、同種の情報が既に開示されているなどの事情がある場合には、不開示情報とはならない。
9 法第5条第3号に規定する「審議、検討又は協議に関する情報」について
(1) 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院並びにこれらに属する機関を指し、「内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報」とは、機構の内部又は機構と国の機関、独立行政法人等、地方公共団体若しくは地方独立行政法人との相互間における事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程の各段階において行われている、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は機構が開催する有識者等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報を指す。
(2) 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、公にすることにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合をいい、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。
(3) 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報等を公にすることにより、誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。
(4) 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十分なままで情報を公にすることにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合をいう。
(5) 「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。
(6) 審議、検討等に関する情報については、機構の意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、法第5条第3号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が全体として一つの政策決定の一部の構成要素である場合、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる場合等審議、検討等の過程が重層的又は連続的な場合には、当該意思決定が行われた後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して同号に該当するかどうか判断する必要がある。また、意思決定が行われた後であっても、審議、検討等に関する情報を公にすることにより、国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合などは、不開示となり得る。なお、審議、検討等に関する情報の中に調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実やこれに基づく分析等を記録したものであれば、一般的に同号に該当する可能性は低い。
10 法第5条第4号に規定する「事務又は事業に関する情報」について
(1) 「当該事務又は事業の性質上、適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するものである。法第5条第4号の各規定の要件の該当性は客観的に判断する必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」といえるものであることが求められる。
(2) 「支障」の程度は、名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。
11 法第5条第4号イに規定する「国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」について
(1) 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていること等が考えられる。「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。
(2) 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」とは、「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していない地域、政府機関その他これらに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすおそれをいう。例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなるもの、他国等の意思に一方的に反することとなるもの、他国等に不当に不利益を与えることとなるもの等、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報が該当する。
(3) 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」とは、他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望む交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下する等のおそれをいう。例えば、交渉(過去のものを含む。)に関する情報であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が採ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当する。
12 法第5条第4号ロに規定する「犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」について
(1) 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止し、又は犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。
(2) 「その他の公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものが該当する。また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムに対する不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報及び被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も該当する。
13 法第5条第4号ハに規定する「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」について
監査、検査、取締り、試験及び租税の賦課若しくは徴収に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがある事務である。これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等のように、事前に公にすると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となったり、法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽することを容易にするおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。また、事後であっても、例えば、監査内容等の詳細についてこれを開示すると今後の法規制を免れる方法を示唆することになるようなものは、法第5条第4号ハに該当し得る。
14 法第5条第4号ニに規定する「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」について
機構が一方の当事者となる契約、交渉又は争訟に係る事務においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。これらの契約等に関する情報の中には、例えば、用地取得等の交渉方針や用地買収計画案を公にすることにより、適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉、争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。
15 法第5条第4号ホに規定する「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」について
機構が行う調査研究に係る情報の中には、例えば、1)知的財産権に関する情報、調査研究の途中段階の情報等であって、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、2)試行錯誤の段階の情報について公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。
16 法第5条第4号ヘに規定する「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」について
機構が行う人事管理(役職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること。)に係る事務は、機構の組織としての維持の観点から行われ、一定の範囲での自律性を有するものであり、人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。
17 法第5条第4号トに規定する「国若しくは地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」について
機構の事業に関連する情報については、企業経営という事業の性質上、企業経営上の正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは不開示とする。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その範囲は、法第5条第2号の法人等の場合とは当然異なり、より狭いものとなる場合があり得ることに留意する。
第4 部分開示に関する基準
開示請求に係る法人文書について、法第6条に基づき部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
1 法第6条第1項に規定する「開示請求に係る法人文書の一部に不開示情報が記録されている場合」とは、開示請求について審査した結果、開示請求に係る法人文書に、法第5条に規定する不開示情報に該当する情報が含まれている場合をいう。この場合、法第6条第1項の規定により、部分的に開示できるか否かの判断を行うものとする。
2 「容易に区分して除くことができるとき」について
(1) 当該法人文書のどの部分が不開示情報に該当するかという区分けが困難な場合だけでなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示を行う義務はない。「区分」とは、不開示情報に該当する部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情報に該当する部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆を行うなど、加工することにより、情報の内容を消滅させることをいう。
(2) 法人文書に含まれる不開示情報を除くことは、当該情報が文書に記録されている場合、文書の複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。一方、録音テープ、ビデオテープ、磁気ディスク等に記録された情報については、区分して除くことの容易性が問題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているが、そのうちの一部の発言内容のみに不開示情報が含まれている場合や、録画されている映像中に不開示情報が含まれている場合などがあり得る。このような場合には、不開示情報を容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。なお、電磁的記録については、紙に出力した上で、不開示情報を区分して除いて開示することも考えられる。電磁的記録をそのまま開示することを求められた場合は、不開示情報の部分のみを削除することの技術的可能性等を総合的に判断する必要がある。既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。
3 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」とは、部分開示の実施に当たり、不開示情報を削除する方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念的には一まとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、不開示義務に反するものではない。
4 「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない」とは、不開示情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、開示をしても意味がないと認められる場合を意味する。例えば、残りの部分に記載されている内容が、無意味な文字、数字等の羅列となる場合等である。この「有意」性の判断に当たっては、同時に開示される他の情報があればこれも併せて判断する。また、「有意」性の判断は、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によって判断すべきものではなく、個々の請求者の意図によらず、客観的に決めるものとする。
5 法第6条第2項に規定する「前条第1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合」について
(1) 特定の個人を識別することができる情報について、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、残りの部分を開示しても個人の権利利益の保護の観点から支障が生じないと認められるときは、当該残りの部分については、法第5条第1号に規定する不開示情報には該当しないものとして取り扱う。したがって、当該部分は、他の不開示情報の規定に該当しない限り、法第6条第1項の規定により開示することになる。ただし、同項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体として不開示とする。
(2) 特定の個人を識別させる要素を除去し誰の情報であるかが分からなくなっても、開示することが不適当であると認められる場合もあることに留意する。例えば、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未公表の論文等開示すると個人の正当な権利利益を害するおそれのあるものは不開示とする。
第5 裁量的開示に関する基準
開示請求に係る法人文書について、法第7条に基づき裁量的開示ができる場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
「公益上特に必要があると認めるとき」とは、法第5条各号においても、当該規定により保護する利益と当該情報を開示することによる利益との比較衡量が行われる場合があるが、同条の規定が適用され不開示となる場合であっても、なお公益上特に必要があると理事長が高度な判断により認めた場合に限り、法第7条に基づき開示することができる。
第6 法人文書の存否に関する情報に関する基準
開示請求に対し、法第8条に基づき法人文書の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。
1 「開示請求に係る法人文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求に係る法人文書が実際にあるかないかにかかわらず、開示請求された法人文書の存否について回答すれば、開示請求に含まれる情報と不開示情報該当性が結合することにより、実質的に不開示情報を開示することとなる場合をいう。例えば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された文書の開示請求があった場合、当該法人文書に記録されている情報は不開示情報に該当するので、不開示であると答えるだけで、当該個人の病歴の存在が明らかになってしまう。このような特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求は、法第5条各号の不開示情報の類型すべてについて生じ得る。
2 法人文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否する場合に行政手続法(平成5年法律第88号)第8条に基づき示さなければならない処分の理由については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった法人文書の存否を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示する。また、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、存在しない場合に不存在と答えて、存在する場合にのみ存否を明らかにしないで拒否したのでは、開示請求者に当該保有個人情報の存在を類推させることになることから、常に存否を明らかにしないで拒否しなければならない。
附 則
この審査基準は、令和4年4月1日から実施する。